市井三郎没後30年によせて


代表 市井 Blades 順子

岩波新書創刊80年記念フェアが2018年10月に開催されました。 各界の著名人からはじめて読んだ新書、はじめての読者に薦める新書、はじめて書いた新書というかたちで寄せられた推薦書目の中から岩波新書50点が選ばれ、創刊80年記念フェアの対象となり、市井三郎著『歴史の進歩とはなにか』 もその中の一冊に選ばれました。そして1971年初版からほぼ半世紀を経た2018年に24年ぶりで同書は再刊されました。
それに加えて2019年10月24日には電子書籍版で配信が開始されることになっております。長らく絶版となっていた書物ですが、ご興味のある方、もう一度再読してみたいと思われる方は岩波新書の電子書籍版をお勧めいたします

今年、2019年は市井三郎没後30年にあたる年です。この30年の間に市井が提唱していた歴史の進歩、「“不条理な”苦痛 − つまり各人が自分の責任を問われる必要のないことから負わされる苦痛 − を減らしていくこと」はどれだけ前進したのでしょうか。個々人のあいだの不条理な苦痛による不公平、不平等、差別、隔差、が実質的に減少するような方向へ動いてきたのでしょうか。  
        
  この30年、世界各国で世の中の情勢が安定せず、罪のない人々の命がうばわれたり、住む場所が破壊されたりしている数は減っているどころか多くなっています。日本では家庭内暴力の件数も増え、いじめが原因で自殺にまで至ったケースもなども多くなっている状況です。      

人間は誰しもが大なり小なり“不条理な苦痛”を経験して生きているのだと思います。“不条理な苦痛”は世の中からすべて抹消することはできないでしょう。しかし”不条理な苦痛“をなるべく減らしていく社会をつくるという価値理念をより多くの方々が持てたとしたら、歴史の進歩は科学的進歩だけでなく倫理観念をも含めての進歩になるのだと思います。これは市井が提唱していた人間の歴史の進歩であり、人がその生涯をより充実して送りうる世の中を創っていくということなのではないでしょうか。

「市井三郎没後30年記念トークイベント」が2019年11月10日に神保町で開催されます。東京大学名誉教授、東北大学名誉教授であり、現在は国際基督教大学特任教授でいらっしゃる川本隆史先生をお招きして『歴史の進歩とはなにか』を読み直し、現在の世の中で私たちは何ができるのか、を考えてみたいと思います。ご興味のある方はぜひご参加ください。このトークイベントで皆様とお話ができるのを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。  


市井三郎基金代表
市井ブレーズ順子


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